今回の施工は、3年前に工事させていただいた方からのリピートのご依頼でした。詳しくは以下のURLから当初の施工の様子をご覧いただけます。
実は、当時から既に今回の工事の事も考えてプランをしてほしいということをお聞きしていました。デザインは門周りからお庭までに広がり、かつ造成工事も含まれている内容ですので、経験が問われる案件です。ザックリ説明すると、3つの分かれた敷地を最終的には1つにしてしまうということ、しかもその3つの敷地は同じレベルにあるのではなく、高低差も違っており、敷地の形状も異形の組み合わせという条件。これらを繋げるために一つの円から広がるラインですべてを繋ぐというコンセプトのもと案件は始まりました。
これが統合された敷地の図面になります。図面では3つの敷地が既にまとめられています。建物が2軒ありそれぞれにお庭部分を備えています。メインとなる門屋付近が、円の中心となり、アプローチはその円にそって広がっていき、それぞれのお庭空間を結ぶアプローチとなっています。
今回のお庭は次の図面の、青線で囲まれた範囲になります。
このお庭のコンセプトは「座してくつろぐ癒しのガーデンリフォーム~フレームガーデン~」。
当初既存建物の増築を検討されてましたが、諸条件によりサンルームを設置することと、そこから広がるお庭に重きを置いた内容にしてほしいということでした。
パースイメージは、設置したサンルームの中からお庭を見たときのイメージです。巨大な角柱とフレームにより、景色は四角に切り抜かれます。切り抜かれた景色は石壁と植栽で描かれた景色。絵画をみるように建物の内からの眺めを大切にしたお庭になっています。
お庭で何をするためにリフォームまたは新築するのかが事前に検討すべき事です。今回のご依頼は、特に庭で何をするわけではない、広い敷地を手入れを少なく維持できて、さらに眺めていたいそんなお庭にしてほしいというのがお施主様の願いでした。またお客様を招かれたときに、お庭へ招き本宅の中に入らなくても接客できるスペースがサンルーム内部で、そして景色を通してお庭を楽しんでもらう、そんなお庭にしたいとのことでした。
一般住宅としては広すぎる敷地にスッキリと広がったお庭。敷地間の高低差を活かして、階段によってせり上がっていく空間を作っています。石壁を背景にして植栽の緑を楽しめるようにしています。残念ながら植栽直後の緑はまだまだ未完成なので物足りない気もしますが、数年のうちにさらに見ごたえが出てくると思います。植栽の中にはカラーリーフや花木もちりばめてあり、早春から初夏、夏、秋へと何らかの花が咲くようにしています。そしてあまり気難しい(気候に適していない)植栽はなるべくはずすようにしています。
使う素材はタイルや石材と色々な素材がありますが、色調やラインをシンプルにしてスッキリおさめました。また人工芝により広い面積をグリーンで覆いました。最近の人工芝は割と良く作られていますので周年きれいな状態にするにはいいかと思います。天然芝が勿論本物でいいのでしょうが、メンテナンスにかける時間や芝生にかける情熱が持てない場合はやめておいたほうが賢明です。敷地が広い場合、同じ素材だけで覆ってしまうデザインもありますが、今回は目に飛び込むグリーンの色を考えて人工芝を選んでいます。メンテナンスがいらないわけではありません。枯葉などが多い月は掃除にそこそこ気を配る必要があります。
目線を変えてみると、見えてくるのはサンルーム。ルームになっている部分と屋根だけのオープンテラスになっているところの両方があります。お施主様の用途に合わせてそのように計画しました。お施主様は風鈴が好きで集めてらっしゃいますが、その風鈴の音色が心地いいテラスになっています。LIXILのココマⅡ ガーデンテラスタイプとオープンテラスタイプの組み合わせになります。
サンルームの中にはアウトドア用のファニチャーを備えています。タカショーのブルコス。どっしりしたデザインでゆとりを感じさせます。来客の折は、この中での時間を楽しんでおられます。気楽に過ごせる空間になりました。
このお庭の動線計画にも工夫をしています。広い空間なので、ただ平面で造ってしまうと物足りません。中央に配置された角柱は、園路計画を効果的にするためにも存在しています。見えない場所をつくることで、歩みを進めると景色が変わることがわかります。そして角柱は壁ではありません。その隙間から見える景色のおかげで一つの空間であることがわかり、狭く感じさせないようになっています。
メインの樹木はモミジ。枝ぶりに広がりのあるものを選びました。お施主様も大変気に入ってくださいました。メインの樹木はサクラも候補にありましたが、お手入れや害虫の点においてモミジに軍配が上がりました。風にそよぐ姿もなんとも癒されますが、夜のライトアップも迫力があってよいですね。
ベニシダレモミジを取り入れています。洋風なガーデンですが、石積みを取り入れてモミジなどの樹木にも合う背景を用意しました。和風の雰囲気を持つ樹木でも、傍に配置する素材を選ぶことにより洋風になじませることができます。
植物の魅力は、完成と共に現れるものでもなく、3年ほど経過したときにさらに良さを発揮します。しかしその頃からメンテナンスによる制御をしないと、人工のお庭のなかでは収まらないのも植栽の難しいところです。完成したときの緑に満足せずに、長年付き合いながら植物の見せる四季の姿と、そのメンテナンスを楽しめるように付き合いたいですね。業者さんに任せたとしても、年に数回の剪定くらいが一般的です。ということは植栽の美しいうつろいだけでなく、異変に気づかないといけないのは、お住まいの方にしかできないことといえます。