ハイゴケのメンテナンス

Maintenanceハイゴケのメンテナンス2019/10/10

2年前にハイゴケ(Hypnum plumaeforme Wilson)を用いてしっとりとした坪庭を作庭しました。

ハイゴケは、コケの中でも日当たりを好み、乾燥に強いと知られており屋上庭園にも利用されます。

いろいろな種のあるコケの仲間の中では日照を好みますが、それでも日差しが常に降りそそぐ場所では生き生きとは育ちません。ひたすらに「耐えている」ようにしか育たないのです。午前は日があたり午後からは日陰、もしくは木漏れ日程度の日差しが当たるぐらいがきれいに育ちます。

また乾燥に強いとは言っても、乾燥が好きなわけではありません。乾燥してもお水を与えると元に戻りますが、ハイゴケらしく這いながらモリモリ育つ様子は見られません。葉色は、少し黄色っぽくなります。これもまた「ただ耐えている」様子です。半日陰で適度な湿度を保てる場所であればもりもり育ちますし、コケの緑が美しい状態になります。

お客様から連絡を頂き、コケの様子がおかしいとのことで、様子を見に行きました。この坪庭ではタイマーで管理されたミスト散水を行っています。この2年の間すごくきれいに育っていたのですが、夏ごろから調子が悪くなり、画像のように枯れている部分がちらほら見えています。真夏に一日数回のミストを行っていましたが、2年の間に生育が進み、ハイゴケも育ちながらモリモリと込み合っていたので、湿度と日射による高温や込み合いが原因で部分的に枯れてしまったのだと思います。

ミストを使っても、万能ではありません。常にコケが一面美しく育つというのはなかなか難しいものです。こういった時はコケの張り替えを行い、適度に剪定しながらメンテナンスしていきます。混み合って窮屈な状態が常に続くとどんな植物でも調子が悪くなります。ハイゴケが何も人の手を加えなくても自生している環境ではありません、故に元気に育っていても、人工の方法で作り出した環境では、どこかで人の手間を加えてお手入れしてあげなくてはいけません。

まず、枯れた部分を除去して土壌の不陸を直していきます。この時に枯れたモミジの葉っぱなどふくめてきれいに除去します。そして元気に育っているハイゴケの部分も込み合いがあるので、少し手で広げて隙間を作ったり、長く伸びたものはハサミで剪定しながら隙間を作っていきます。

枯れてしまった範囲は新しいコケを張り付けていきます。地面に密着するように押さえつけながら貼っていきます。

ハイゴケは横に這うように育ちます。そして根はありません。根で体を固定するのではなく、隣通し寄りあって塊となり全体的に支持されるように地面に這って育ちます。故に栽培上は目土を重石としてハイゴケの隙間に入れ込んで、土の重さで動いたりしないようにする必要があります。

この目土は芝生の目土とは少し違っていて、芝生の場合は砂でいいのですが、ハイゴケの場合は保水性、通気性に優れているほうが適しています。今回は芝生の目土をつかっているのですが、赤土を極細粒にしたもので、保水力があるものを使用しています。今回様子を見ながら、さらに保水力が必要な場合は、ピートモスを3割ほど混ぜてみようと思います。黒土が良いとされてますが、関西では黒土は手に入りにくいのでこのようにしています。

さて、準備した目土をハイゴケの上に振りかけるわけですが、コケの上に撒いて終わりではなくて、この目土をコケの隙間に入れ込んでいかなくてはなりません。

水流の勢いでコケの隙間に目土を押し込みます。最初は土が表面に見えていたと思いますが、押し込むとコケの緑の色がきれいに出ます。指でハイゴケをつかみながら隙間に目土を押し込んでいきます。

この画像で、土が見えているところはまだ散水によって目土を押し込んでいないところです。手前の緑の綺麗な場所が水流によって目土を下のほうへ押し込んだ部分になります。土で葉の緑が見えなくなる状態では、ハイゴケの生育に支障がでますので目土の被せすぎには気をつけます。

最後にミスとスプレーの動作や、ミスト範囲を確認して完了しました。

この画像は綺麗に生育しているコケの一部を引き抜いた様子ですが、茶色くなっているのは、ハイゴケが育っていく一方、伸び過ぎた根元のほうは、混み合いすぎて、日も当たらず緑の葉が茶色くなってしまっています。ここまでなる前に、ハイゴケを刈り込んでおくほうがよかったでしょう。

モリモリ育った下の葉はこのようになってしまいます。それだけよく育ったということではありますが。

こうしてメンテナンスを終えました。スプリンクラーの回数も少し制限して、温度の高い時間帯には散水しないような設定に直して今後は様子を見ていくことになりました。コケのスプリンクラーに灌水は任せていたので、モミジが少し水分が足りていなかった様子ですが、今後はモミジには特別に灌水をしてもらうようにお願いしました。ちょっと葉が少なくなってしまっています。モミジに限らず樹木は、水分ストレスがかかったとき葉を落として、葉から水分が蒸散されるのを防ぎます。

ハイゴケを育て方はいろんな書籍にも紹介されています。コケを綺麗な状態を保つには常に張り替えやまきゴケら目土などをしながらグリーンを保っていくことが必要かと思います。

最後にもう一度まとめると、ハイゴケは半日陰で育て、湿度は適度に保つほうがきれいに育ちます。込み合いすぎると下のほうが茶色く変色してしまうため、ハサミで時には上部をカットしたり、指で広げながら、そして保水性のある目土を間に入れ込むことで、継続的にきれいに育ってくれます。