神戸市の某所にある保育園の園庭のデザインを担当しました。
「お客様との出会い」
数ある会社の中から、弊社のホームーページをご覧になられてお問い合わせいただきました。園舎を施工される大手ハウスメーカーのプランもありましたが、別の角度から提案させていただき今回採用となりました。
コンセプトは「五感をはぐくむ四季彩庭園」。この保育園は山の中に新しくできた保育園で、特に決まった遊具を設置するのではなくて、自然の中でのびのびできる園庭にしてほしいということでした。
子供たちの園生活は、想像的、創造的であるべきで、遊具が無くても子供たち自ら無いところから考えて創り出してほしいという願いを込めています。デザインの肝になったのは、園庭のゾーニングとそれぞれの空間を繋ぐ動線計画にあります。
図面の左から「コナラの森かけっこ広場」「まつぼっくりの森」「四季の森」「やさいの園」「ハイハイ広場」「芝生の広場」と6つのエリアを大きなRラインでつなげているのが特徴になります。
「コナラの森かけっこ広場」「まつぼっくりの森」はそのエリアにもともとある樹木から名付けています。どんぐりや松ぼっくり、枯葉を使った工作の材料が溢れています。
「四季の森」については、新しく花木を植栽して四季を感じれるエリアにしました。色や香りがいつの間にか子供たちの記憶に残ってほしいと願いました。
「やさいの園」は子供たちと一緒に育てる野菜のためのお庭。自分たちで育てた野菜を食べる喜びを大人になっても持ち続けてほしいと思います。
「ハイハイ広場」は年少の子供たちのハイハイするための庭であり、囲われた場所でありながら、芝生広場やメインのアプローチから目が届き、年少っこたちがいろいろな人の動きを観察できる場所になっています。
最後に「芝生広場」は、起伏を持たせた地形に張られた芝生と既存の樹木で構成された広場です。夏には緑陰が涼しげな場所であり、秋から冬には落葉樹が葉を落とし明るさを取り戻す場所です。
できるだけ自然の中で馴染むように、また安全のため見晴らしがよいようにしています。
隠れることができる場所があるほうが子供たちにとっては楽しいと思うのですが、園の管理側の意見なども尊重して事前にヒアリングを重ねています。
一方でアプローチデザインは歩いてみたくなるように工夫をしています。単調にならないように、そして美しく描いた線の中で子供たちはどのように原風景としての記憶に残ってくれるのだろうと思いを馳せながら描いています。
園の入り口には大きな桜があります。撮影時期が秋だったのでわかりませんが、園内にはたくさんの桜がもともと植わっており春には心地よいピンクに包まれた春を迎えます。門扉の左側は、道路側からの福祉通路で緩やかなスロープになっています。
入口から大きなアプローチを通っていくと、見えてくるのは右手にハイハイ広場。年少の子供たちの教室の前に設置された安全な遊び場です。人工芝で清潔な状態で寝ころべるようにしており、低く透過性のあるフェンスは、外で遊ぶ年中、年長さんの子供たちの遊ぶ姿をみて学ぶことができるように配慮しています。
メインのアプローチにもなるので、円周に沿って季節の草花が植栽できる花壇も備えています。
このRのアプローチはコンクリートを使い、表面に舗装用の塗料で仕上げてあります。自然でありながらコンクリートはどうかという意見もあるかもしれませんが、歩きやすさ、乳母車や車いすの通行、送り迎え時の人の往来をかんがえての選択です。
この時期のアプローチは秋から冬の草花で彩られています。ストック、ビオラ、アリッサム、プリムラの色鮮やかなアプローチです。お花を身近に接する場所を保育園のころから経験し、大人になったときでも花の良さを大切に思ってもらえないかなという願いも詰まっています。
春にはチューリップ、夏にはひまわり、秋にはコスモスなんてのもいいかもしれません。
アプローチを歩いて、園舎の玄関の前にはひときわ大きい円の小道があります。この小道沿いにはもともと、リョウブ、ミツバツツジが植わっており、季節には花を咲かせます。この場所に集中して、アジサイ、ヒペリカム、コムラサキシキブ、ディクロア、ウツギ、キンモクセイなどの花木を新たに植栽しました。この小道は四季の小道と名付けました。四季折々の花の姿や香りが楽しめる小道なんです。子供たちの目にどう映り、いろんな香りを楽しんでくれたらという願いを込めています。
またメインのゲートからもつながった管理用の通路。ここは実は子供たちのかけっこの直線にもなっているとのことです。思い切って走れる場所も大切ですね。
四季の小道を通って、行きつく先は年長さんたちの教室の前の庭「コナラの森かけっこ広場」になります。大きな子供たちの遊び方は飛んだり跳ねたり、走ったり。しっかりした地面を用意しました。タイヤが付くような遊具や竹馬、縄跳び、一輪車などで遊ぶことを想定しています。また当初はここは笹が一面を覆っていました。それらの笹をすべて撤去することは容易ではありません。のちに笹が繁茂しないようにしています。
手前に写っているのは砂場です。
かけっこ広場とついたのはこのウッドチップを敷き詰めたこの場所の事を言います。柔らかいクッション性のあるウッドチップの上なら思いっきり飛び跳ねたり、軽いチップを自分たちで動かして、山を作ったり隠れたり?遊具が無くても遊び方なんていくらでもあります。
私たちができるサポートとして、野菜作りを子供たちと一緒にさせていただいてます。
園庭の一部にある「やさいの園」で子供たちと一緒に植え付けをしました。定期的に巡回してひつような作業もさせていただきます。植えたときの野菜の姿から、短期間のうちに実をつけだす、そしてそれがいつも給食で出てくる野菜ということであれば、子供たちはすごく喜んで食べてくれるということです。
子供たちの目はキラキラしていて、野菜のお花を見せてあげると、みんな興味津々でのぞき込んでいました。
野菜と一緒に植えるといい効果(害虫忌避や生育促進)を与え合うとされるコンパニオンプランツなども取り入れて、子供たちにも面白おかしく説明したり楽しく栽培をしています。自分たちで作った野菜が食卓に出てくることから野菜嫌いがなくなりますし、育てる心を養える一助になれば、将来的に子供たちが大人になったときの食や植物(生き物)に対する理解ももっとより深い付き合いができるのではという期待を抱きつつ、この活動をこれからも進めていこうと思っています。
植物と付き合う生活というのは、管理が伴うため楽ではありません。しかしその苦労も一つの経験であり、その苦労を苦労と思わない、緑に対する価値観というものが将来もっと大切になってくると思います。
こんなに小さな子供たちが一体どれくらいのことを理解してくれるかはわかりません。ただ英語と一緒で、できるだけ小さいうちから触れていることで何らかの良い影響が出るはずと期待したとしても、それは間違いではないのではと考えています。
遊具が並ぶ園庭が日本の保育園のほとんどかと思います。
そのほうが遊ばせやすいからなのかもしれませんが、このような自分たちで遊びを創り出すしかないような園庭がもっと増えていけばいいのにと個人的には期待して、またこのような仕事にかかわれるひが来ることを願いながら、さらに自分自身の能力も開発していきたいと思います。