『お客様との出会い』
以前、お仕事させていただいたお客様からの依頼でした。開業されている医院の待合室から見える風景が、新しい分譲地開発により目まぐるしく変わってしまったとのこと。これまで医院のPRポイントでもあった待合室からの景色は緑が広がる日本庭園。ゆったりと景色を見ながら時間を待っておられた患者さんも少なくないと思います。新しく家が建ち、これから人通りも増えてくることを懸念して、これまでの景色をできる限り守るために何とかしたいとのご希望でした。
既存のブロック塀と門扉。道路側から見たところです。既存のブロック塀は、古いコンクリート擁壁の上にたてらていました。8段積みブロックの約半分は敷地内の盛り上がった地形で土留めの役割を果たしていました。つまり土圧を受けています。現状、1cmほど道路側に倒れている様子もわかり、このブロックと新しい目隠しとの関わりも検討しなくてはなりませんでした。欲しい目隠しの高さは今のブロック塀の上に追加約80cmほどです。ブロック塀に負荷をかけることはタブーな状況でした。既存を残すプランと、全部撤去して擁壁からやり直すプランと、当初はいろいろ考えましたが、最終的には部分撤去、部分新設という形で安全面も確保しつつ、欲しい高さまでの目隠しを設置することになりました。
このブロック塀の内側に新しくたてる目隠しの柱を立てるわけですが、重要な基礎は、ブロック塀よりも下で設置。こうすることでフェンスのがブロック塀にかける負荷をなくします。もしブロックが倒れたとしても目隠しは自立できることになります。
以前の門扉は高さ1.3m程度。今回は2mちょっとあります。当初、目隠しのフェンスはもっと高くを検討していましたが、この勝手口の門扉の上に門屋を乗せたプランになり、ごちゃごちゃする点を考慮。もんぴの高さまでを上限にしてプランしています。いくらでも目隠しを高くして、、、というわけにもいかず、最低限の目隠しと人通りが見えない高さという条件で設定しました。門扉と竹垣の高さが揃っているとスッキリとした印象になります。門柱は下から全部解体して作り直しています。
既存のブロック塀は明らかに水が内側からしみだしてきている部分が何か所もありました。土圧を受けているので当然です。この状況で塗装をすると、間違いなく塗装がはがれてきます。本来はこのブロックの内側をすべて掘って、内側から防水処理をしたうえで水の染み出しそのものをなくさなくてはなりません。しかし今回はそこまでの工事となると、予算や既存の植木を撤去しなくてはならず、現実には考えにることはできませんでした。
そこで別の方法で対応することにしました。SKカチオンプラスター弾性タイプという下地材があります。カチオンはよく使われるものですが、つまりは下地と仕上げを強固につなぐもので、はがれにくくする効果があります。その弾性タイプなので、小さなクラックには下地が追従してくれて表面にクラックが出にくいという効果もあります。耐水性に優れているので、水による塗装の剥がれを軽減してくれます。
これを下地のブロックに施工したうえで、塗装の下地を再度行い、塗装をしています。
絶対ということはないのですが、この処置により塗装がはがれる可能性が低くできました。さらに、ブロックの上からの水の侵入を防ぐためにアルミの笠木を取り付けています。水の回った恐れのあるブロックでは乾式の施工方法(タイルボンド貼りなど)が用いられます。費用的には今回の施工はタイル貼りよりもお安くできましたし、門周りとの一体感もでたので一石二鳥でした。