良い苗ってどんな苗?~寄せ植えを楽しむために~

Blog良い苗ってどんな苗?~寄せ植えを楽しむために~2016/10/19

今日は10月19日。昨日からなぜか真夏日ですね。半袖でも十分な陽気になりました。秋に入ってから園芸店では秋から冬に向けての花苗が充実してきました。皆様は園芸店やホームセンターの園芸コーナーはのぞかれますか?

さて、先日久しぶりに寄せ植えを作りました。まずは何を植えるかを考えながら園芸店の売り場を練り歩くわけですが、3つの店をまわってみて、苗の品質に明らかな差があったので、これは買う人にとっては知っておきたい内容であり、趣味が園芸の方はご存知かと思いますがこれからさあ、やってみようと思った方には大変重要な内容なのでブログで取り上げてみました。

上の画像の花はストック(アブラナ科)と呼ばれる比較的メージャーであり古くから店頭をにぎわせる花です。「どちらがいい苗か!?」と聞いてみたいところですが、画像をみたらなんとなくわかるかと思います。答えは右の苗です。

①花芽がたくさんついている。②葉の色が濃い色(左は下葉が黄色っぽくなってます)③低くどっしりとした株姿

と見ただけでこれくらいは違いがあります。

葉の色が下葉からうす黄色っぽくなっているのは肥料が切れている様子を表します(チッソ不足)。花芽が多くついているのは栄養条件が良いことにもかかわってきますが、しっかりと生長している結果であります。低くどっしりした様子というのは、引き締まったということになります。ストックがこの時期に出回るときは、種まきは夏の暑い時期に行います。この時期の苗づくりは徒長しやすく、生産者の皆さまは苦労されるわけです。日当たり、風通し、温度、夜温、水加減などに気を配りながら時には薬を使って徒長しにくいように育てていきます。

徒長するということは、軟弱(ひょろひょろ、ふらふら)な生長をしていて苗も健全ではありません。

徒長苗は、苗を振ってみたり、傾けてみたりするとよくわかります。株元がぐらついているものが多く、根がしっかり張っていないものが多いです。根が張っていないというのは自分の体を支えられないということにもなります。写真じゃわかりにくいですが、右の株はぐらぐらしています。

株元の様子を見てみると、しっかりしている太い茎、密に分岐した芽の様子、引き締まっている様子がよくわかります。

ここからは、店頭で確認するわけにはいかない内容です。まずポットを外して、根を見てみるともう少しわかってきます。まず、根の張り方。白くきれいな根が張っているのが良い条件。そのねがどのように張っているかを確認します。

どちらも少し根の量が少ないのでわかりにくいのですが、左の黒い土のストックは下へ伸びる根だけしか見られません。しかもポットの底へ伸びる根は少ない。右の茶色い土のストックは、そこについた根が上へ伸びてポットに沿って回っているのがわかります。根の発達は明らかに右の苗のほうが良い状態です。

 

次は、ポットの土をつぶしてみました。何がわかるかというと、根の張り具合と、土質が少しわかります。写真ではわかりにくい内容になりますが、左の土は崩していくと水分がすこしにじみ出てベチャベチャしてます。左は湿っているのですがぱさぱさとほぐれる感じです。購入してから1日おいてます。水やりは一回あげてほぼ同じ条件でのことなので、黒い土のほうが保水性の高い土のようです。保水性は適度であればよいですが、過度であると根腐れや、根の発育を妨げることにもなります。使う用土によってもちろん生長が変わってきます。

以上からわかるように、株の仕上がり方やポット内部の根をみると苗の状態は良くわかります。

次は少し難しいですが、私が作った苗です。これはメランポジウムという苗です。夏に最盛期を迎える花ですが、播種は早春に行い路地とハウス内栽培で作ったものです。(路地は霜よけなどあり)

一見、右の苗が良い苗のような気がします。大きくて、花の数も多い。なので右といいそうなのですが、同じくポットを外して根の様子を見てみましょう。

 

これは明らかに、左の苗がよくできています。実際苗の株のぐらつきは左のほうが少なくしっかりできています。右のほうは葉が確かに大きいのですが、少しやわらかい仕上がり。右は固い葉に仕上がっています。

どちらもそこそこいい苗と思いますが、左が路地栽培で右がハウス栽培です。

根の発育、株の締まり具合は、路地による風や日照によるところが大きいと思います。植物は風にあたることで葉や茎を揺らします。そのため揺れに対して根を張りしっかりと育とうとします。葉の組織も固く、厚くできてきます。(うらを返せば、ハウス栽培は風にあたりにくく葉が柔らかくなるということです)

しっかり育てば、病気に強く、害虫の被害にも回復力があり枯れにくいとも言えます。

花も生き物ですので正直です。健康が一番ということですね。

 

先のストック。実はお値段が違います。 良い苗のほうは300円別のは130円。倍以上の値段!当然でしょ!ということなんですが、同じ値段でも品質が異なったり、店が違えば仕入れが違い、生産者さんの腕も違うので苗の品質に違いは出るはずです。今回の識別の事を知っていても損はないと思います。

これまで花苗は1ポットの値段がどんどん下がってきていましたが、最近は良いものが売れたり、少し販売方法(品種、ポップ、ラベル、楽しみ方)に工夫がみられて、値段が高くなってきている傾向があります。

これは悪いことではないと思います。これまでホームセンターに代表される大手量販店が花苗の値段を安く安くしてきました。ホームセンターは植物だけを売る店ではありません。いろいろな商品を総合して販売する形態なので、花をお客様の目を引くための目玉商品としてチラシに乗せたりしながら値段を下げてきました。

結果、中には粗悪な苗、時季外れの苗が出回った時期もあります。花を枯らしたのを自分の責任として、もう花を買わなくなった方も少なからずいるのではないかと思います。花を作るのは簡単な仕事ではありません。安く買われた生産者さんの品質、やる気にもマイナスに影響したと思います。

お花を買うときに必要なのはまずはお店選びかと思います。親切な店員さん、植物好きな店員さんのいるお店をお勧めします。わからないときには教えてくれますし、苗はいいものがそろっている場合が多いです。店員さんもお客さんに喜んでほしいからに他なりません。

ちなみに、今回の良い苗を買ったのは、兵庫県宝塚市山本にある「陽春園」さんです。是非足を運んでみてください。

さて、そこで出来上がった寄せ植えはこんなに素敵にできました。

結構窮屈に植えてますが、そのような植え方をわざとしています。この方法、普段と違う方法で植えたので、どうやって育って、どんなメンテナンスが必要かをこれから確かめたいと思います。

管理までちゃんとできるかどうかを確認したら、来年にはまた寄せ植え教室を開催したいと思います。