既存樹木の撤去をしてみて思うこと(再認識した植栽プランナーとしての意識)

Blog既存樹木の撤去をしてみて思うこと(再認識した植栽プランナーとしての意識)2016/01/12

昨年末、某客様宅で既存
樹木の撤去をしてきました。今回のブログは、既存樹の撤去という仕事を通して、「再認識した植栽プランナーとしての意識」について書いてみました。

 

 

 

お庭のリフォームの際に既存の樹木を撤去することはよくあります。お客様の要望で撤去する場合や、お庭のプランを考える時に、その位置に樹木が無いほうがプランしやすいという場合もあり、その理由は一つではありません。

「一度植えた樹木」も生き物なので、撤去するのも忍びない、可能であれば既存樹を活かしてプランしたいところですが、上手く行く場合とそうでない場合があります。

例えば、十数年を経る間に、意外に大きくなりすぎて、お施主様の手に負えなくなってしまっては撤去せざるを得ません。「毎年枯れ葉が落ちて困る」、「毎年よく伸びるので剪定がおっつかない」、「毛虫が沢山つく」、「管理費用をかけたくない」等など。

植えた時は「記念樹として」、または「知人から頂いたので」、「お庭の業者さんのすすめで」、といろいろあります。樹木は移植という手段も勿論あります。しかしコスト面を考えると撤去となることが多いのが現状です。余程、思い出や価値が認められる以外はコストをかけずに撤去してしまうのが手っ取り早いのです。今回の仕事もそんなこんなで撤去となりました。

今回、撤去した樹木は、大きくなりすぎたミモザでした。どんどん成長し剪定を必要とするので撤去したいというご依頼でした。ミモザを植えた理由は特にないそうで、業者さんのススメによるところのようです。ミモザはマメ科に属する樹木で春には黄色の花をどっさりつけ非常に華やかな樹木です。流行も手伝って一時期話題になりよく植えられました。生長が早く伸びる枝の数や長さも比較的多いのが特徴で、植栽するには広いスペースが必要な樹木です。

解体業者さんが地上部を切り取りその後、自らが樹木の根部の掘り取りを行いました。解体業者さんであっても人力作業での樹木の根部撤去と言うのは労力がいるため嫌われる作業です。地上部撤去は、割りと簡単に行えますが、大変なのは地下部の撤去です。重機があれば簡単ですが、重機の乗り入れが困難な場所の場合は人力での撤去になります。主になる根がどの方向に伸びているかを把握しながら、ただただ掘り進めます。無闇矢鱈にスコップを差し込んでも根は切れませんし、そうそう持ち上がるものではありません。十数年経つと根っこはかなり張り巡っているのです。もし水道管などの撤去できない埋設物い絡んでいる場合はさらに手がかかります。樹木も生きているというのがこの作業の最中によくわかります。余計に撤去するのが可哀想にもなってきます。

この現場は、地上部から30cm程度掘ると急に粘土質土壌に変わります。水が引かない場所ではないのですが、一旦水を含むと土質がドロドロネットリに変わっていきます。通気性も悪く栄養分も少なそうな土壌です。樹木はこのような土には根をあまり張っていかない(当たり前ですが)のです。下へ張るよりは地表付近の比較的良い土壌へ根を張っていました。樹木にとって地表付近のほうが、水分や養分の吸収がしやすいということもあります。すなわち良い条件の方へと根を張っていくのです。その様子は樹木もやはり生き物であることを実感させます。因みにこの場所で発芽して、生長した樹木であればもっと根の張り方は変わっていたはずであり、今回のようにすんなりと撤去できるわけではありません。体を支持するための根っこがもっと発達していたかもしれません。要するに撤去が大変になります。

 

 

それなりに大変だった今回の作業を通じて思うことは、既存樹を撤去するか、活かすかの善悪を考えたのではありません。私たちのようなプランナーは、ペン一つでどこにどれを植えるかを決めて実行することができます。何も考えずに本から抜き出して植物の名前を書いてやり過ごす仕事ではなく、長期的に考えて撤去せずに済むようなプランを提案するほうがより良い内容になると思います。適材適所という言葉の通り、また管理する側の能力や手段、コスト面(自分でやるか業者に頼むか)にも目を向けてそれに合ったプランをする必要があります。植物のプランニングはプランナーの手に委ねられることが多いでしょう。それだけ知識や経験が必要な仕事だからなのですが、任せられた以上はクライアントであるお施主さんのライフスタイルや考え方、管理能力を理解した上でそれぞれに適したプランニングを心がけなければなりません。勿論、お施主さんの生活は普遍のものではありません。しかし今この時点において、しっかり調べたか、考えたか、根拠があるか、適しているかどう、そして最後にお客様に理解を得たかというプロセスが大切なように思います。その結果、撤去をできるだけしなくても済むであるとか、メンテナンスとあわせ、適材適所で植物が枯れずに長く活き活きと育つ理想の庭やエクステリアに少しでも近づけるのではないかと考えます。

最近は緑化がキーワードとなり、住宅を取り巻く環境に樹木を始め様々な植物を植えることが多くなってきました。町の至る所、特に新興住宅地においてはかなりの植栽が施されています。そんな中、適していなかったり、過植、密植等、ごちゃごちゃしていたりいろんな様子が見られます。

お庭など、その空間で過ごし続けるのはお施主様であり、プランナーではありません。末永く愛してもらえる空間にするためには、毎日の庭の様子をいつも見ていられるお客様に、植物への理解を得ることが大切であり、お引き渡しの後でも庭の様子を一緒に見守っていくことが必要だと思います。今後も引き続き、植物とお客様との関係を十分考えたプランニングを心がけ、アフタフォローをしていきたいと再認識した一日でした。また同時に、まだまだ至らない自分への戒めとして、そしてさらなる成長への一歩として書きました。

 

この記事の現場となった施工例を紹介しています。どのようにリフォームが叶ったのか是非ご覧ください。

もっとお庭を楽しむために用途を再検討したガーデンリフォーム